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「……光太郎?」
「はい?」
名前を呼ばれて商品ケースに向けていた顔を上げると、そこには紺色の作務衣に前掛けを着けた三世寺先輩が商品の乗ったお盆を持ったまま、驚いた表情でこちらを見ていた。
「アレ、三世寺先輩?」
服装からして、買い物に来ている訳ではなさそうだ。
「三世寺先輩、バイト中ですか?」
「……いや、実家の手伝いをしているだけだ」
「実家?」
三世寺先輩の家って和菓子屋だったのか!
あ、だから俺にどら焼きや羊羹をくれたんだな。
「……」
棚の上にお盆を置いた三世寺先輩の視線が下がる。
その先が宮園様と繋いだままの手に注がれていて、恥ずかしさから慌てて手を離した。
「……そうか、事情は解った」
「え、何がですか」
三世寺先輩が鋭い目付きで宮園様を睨み付けるが、宮園様も負けずに睨み返している。
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