食費の条件

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「この子って?」 翼が俺の周りや後ろまで覗き込んで来るが、もっさい黒髪メガネ君はとっくにどこかに行ってしまったみたいだ。 「さっきまで居たよね!?」 「誰が?」 「もっさい黒髪メガネ君!」 「誰?」 身振り手振りを交えて説明をするが、翼はその子を見ていないらしい。 「いや、宮園様の知り合い?みたいなんだけど、俺の事知ってるみたいでさ。『宮園様と同じ部屋になったの?』って聞かれた」 「そうなんだ。誰なんだろうね?」 普通ならここで『放っとけば?』とでも突き放したくなるんだろうが、天使のように優しい翼は絶対にそんな悲しい事は言わない。 それどころか「う~ん……」と俺以上に考え込んでいる。 「まぁ、そのうちまた会えるかもしれないし。だから翼も気にしないでよ」 「光太がそう言うなら。あ、休み時間終わっちゃうよ」 「早く早く」と急かす翼に手を引かれながら、三時間目の授業が行われる音楽室へと向かった。 .
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