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寮の管理人の部屋は棟が違うからかなり離れている。
それでも行かなければと妙な使命感に燃えていると、寮の建物から外に出た所で「どうかした?」と何者かに声を掛けられた。
「あ、天使のお友達じゃん」
日が沈んで薄暗くなった中で、茶髪の寮長がニコニコしながら手を振っている。
「えっと、管理人さんに救急箱を借りに行く所でして」
「救急箱? あー、そっか」
思い当たる事があるかのような反応に引っ掛かったが、今はそれどころじゃない。
「すいません、急いでるんで」
「待って待って」
その場を去ろうとしていた俺の腕を、寮長が掴んで引き留めた。
「救急箱ならオレの部屋にあるから貸すよ。すぐそこだから」
『そこ』と寮長が指差したのは、俺の部屋のある棟と隣の棟。
管理人の部屋に行くよりは近いか。
「お願いします」
ペコリと頭を下げると、寮長は俺の腕を掴んだまま自分の部屋へと案内してくれた。
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