Dear -エイエン-

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「え・・・、これって・・・!!」 彼に連れて行かれたその先にあったものを見て、私は驚きと喜びの入り混じる複雑な感情を覚えた。 まさか、こんなものを用意してくれていたなんて・・・。 「実はさ・・・、悠里に内緒で予約しておいたんだ。」 そう言って彼は、ガラス張りのショークローゼットの中に並んだ真っ白なドレスを指差し、照れ笑いを浮かべた。 「考えたくはないけど・・・。 この先どうなるかわからないだろ? だから、自由の利く今のうちに、悠里のウェディングドレス姿を見ておきたかったんだ。」 遼はそう言った後、ホテル内にあるブライダルサロンのスタッフを呼び、私にウェディングドレスを試着させてくれるよう声を掛けてくれた。 憧れだった、真っ白なドレス。 まさかこんな早く、夢に見ていたドレスに袖を通せるなんて・・・。 ドレスを試着する私の表情は、終始ニヤニヤしっぱなしだっただろう。 そして好みのドレスを3着試着し、その中で一番シンプルなAラインのドレスをチョイスした。 「そろそろいい時間だ。 別館のバルコニーから海が一望できるから、夕陽と海をバックに写真を撮ってもらおう。」 綺麗に着飾った私を迎えに来たのは、タキシード姿に着替えた王子様。 ただでさえ素敵な人なのに、今日は何十倍もカッコ良く見える。 私の手を引き、海の見えるバルコニーへと誘導する遼。 手を繋いでホテルの館内を歩く私たちに、来館していた全ての人の視線が集まっていた。 本物の結婚式で感じる心地良い照れと緊張感。 多くの人に注目され、時には「おめでとうございます」といった声も聞こえる。 本物の結婚式ではないけど、これだけでも充分幸せ・・・。 だけど・・・、まだ願っていいのなら、いつか本当の結婚式を彼とあげたいと思った。 開け放たれたバルコニーから見える、ブルーとオレンジのグラデーション。 この最高の景色を、絶対に忘れないように・・・。 目を見開き、前だけを見つめる。 そしてこれからも、この先の人生を彼と一緒に歩いて行きたいと改めて思った。
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