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「遼・・・!!
どうしてここに・・・?」
その私の問いに答えようとする彼も、いつの間にか涙を流していた。
私の声も、彼の声も、涙に埋もれて言葉にならない。
そんな遼の言葉を代弁するかのように、私の横に立っていた一稀がこう教えてくれた。
「実はさ・・・、この前のパーティーの時、俺とお前が並んで座っていたのをたっちゃんは気付いてたんだって。
それで、お前からの手紙を読んだたっちゃんが、俺なら何か知ってるだろうって事で相談しにきていたって訳さ。」
私の送ったあの手紙は、受付の係の人を通じしっかりと遼の元へと届いていた。
そして私が妊娠した事実を知った遼は、勘当覚悟で婚約を破棄し、一稀に相談しながら私の前に現れる時期を伺っていたのだという。
「悠里とたっちゃんを再会させるなら、絶対に今日がいいと思ったんだ。
だって今日は・・・。」
そう、今日は私にとって特別な日。
今日、7月31日は・・・。
「悠里、20歳の誕生日おめでとう。
たっちゃんを連れてきたのは、俺からのバースディプレゼントな。」
一稀は得意気にそう告げ、助手席のドアを開けて連れてきた『バースディプレゼント』を私の前に差し出した。
そして、私の前に立った彼からは、久しぶりのハグと甘いキス・・・。
「・・・良かった。」
「これでずっと・・・、一緒にいられるな・・・。」
目の前に一稀がいる事なんかお構いなし。
離れていたこの半年。
そして途切れそうになっていた赤い糸を再び繋ぐかのように、私たちは何度もキスを繰り返した。
「あーあ、見てらんねぇよ。
んじゃ、俺は帰るからなー。」
一稀は呆れ顔で車に乗り込み、抱き合う私たちを尻目に車を動かした。
「じゃ、後は2人で仲良くなー!」
そう言い残し、彼は『プレゼント』を置き自宅へと帰っていった。
残された、一稀からのバースディプレゼント。
そしてマトリョーシカのように、その『プレゼント』から渡された『プレゼント』は・・・。
「悠里・・・、待っていてくれてありがとう。
最後に会ったあの日、約束したもんな・・・。」
「うん・・・。」
ずっと耳に残っていたあの言葉。
そしてその言葉が今、再び私の耳に入ってくる。
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