Dear -エイエン-

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――― 重く進まない足取り。 アイボリーのフォーマルワンピースを身に纏い、私は表参道を目指し青山通りを歩いていた。 脇に抱えたクラッチバッグには、スマートフォンとハンカチ。 それから、ずっと私の事を見守ってくれていた彼に宛てた1通の手紙も入っている。 高校を卒業し1年が過ぎた初夏のある日、私は中学時代に通っていた塾の講師であった『辰巳遼』の婚約パーティーに招待されていた。 どうして私が呼ばれたのか。 そんな事がずっと頭の中を駆け巡っていたが、今日はもうパーティー当日。 招待状の『出席します』という項目に丸を付けてポストインしてしまった事を、今になって後悔した。 しかしここで私が欠席すれば、きっと一生、無念とわだかまりが残る事となっただろう。 待ち合わせは表参道駅近くのカフェ。 ここで私は、懐かしいあのメンバーと合流する事になっていた。 『Marie』と書かれた看板が目立つ表参道沿いのカフェでは、土曜日の日中とあってか多くの人がカフェタイムを楽しんでいる。 私はその店のテラスに回り、背中を向けて座っている2人に声を掛けた。 「マコ、誠也、久しぶりっ!」 背後から名前を呼ばれ、彼らは私の方を振り返った。 そして懐かしそうに私の顔を見ながら、嬉しそうな笑みを浮かべる。 「悠里!久しぶり~!! 4年ぶりだよね?元気にしてた?」 「あれ?お前太った? なんだかシルエットが・・・。」 私との再会を喜ぶマコとは裏腹に、いつも誠也は憎まれ口を叩く。 平気で失礼な言動を口にする誠也に、私は苦笑しながらこう言い返した。 「いいじゃない。 女の子は少しくらい丸みを帯びている方が可愛いのよ。」 そう言いながら私はマコの向かい側の席に掛け、彼女に手渡されたドリンクメニューを覗き込んだ。 いつもなら迷わずカフェラテを選ぶ。 だけど今日は、そういう気分じゃなくて・・・。 「すみません。」 私は近くを通りかかったカフェスタッフを呼び止め、自分のオーダーを彼に告げた。 「オレンジジュースを1つお願いします。」 ニッコリと微笑みながら、店員にオーダーを伝えた私。 そんな私の顔を、誠也はじっと見つめた。 「お前、オレンジジュースなんて飲むんだ?」
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