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―――
「おー、悪い悪い。
だいぶ待たせちまったか?」
カフェの店内から、遅れてきた一稀が姿を見せる。
その風貌を見た私たちは、思わず「あっ!」と声を出してしまった。
昔はやんちゃで悪そうなイメージのあった一稀。
しかし、今の一稀は・・・。
「一稀・・・、どうしたの!?」
「しばらく会わないうちに、随分な好青年になったわね。」
「一瞬、お前が誰なのかわからなかったぞ・・・。」
それもそのはず。
不良っぽく髪を茶色く染め、ワックスで盛り上げていたはずの派手な髪型。
そして、当時流行っていたギャル男ファッションで塾に通っていた中学生の一稀とはまるで正反対。
髪に緩いパーマをかけ、きっちりとしたスーツ姿で登場した彼は、見違える程の好青年になっていたのだから。
「なんつーかさ・・・、校風に合わせた・・・ってヤツ?
うちの学校、みんな綺麗目なヤツばっかりだからさ。」
そういえば、彼が進学した高校は私立の超名門校だった。
そしてその学校はエスカレーター式で有名私大に進学でき、彼は現在大学の医学部に在籍している。
「お前が医者の卵かぁ・・・。世も末だな。」
そうぼやきながら、誠也が席を立つ。
それに続いて、私とマコも会計をしに店内のレジカウンターへと向かった。
「誠也とマコは変わんねぇな。
悠里は・・・、随分大人っぽくなったよなぁ・・・。」
一稀にそう言われ、照れ笑いを浮かべる私。
だってこの4年間、ずっと頑張ってきたもの。
彼に相応しい、綺麗でしっかりした大人の女になるんだ・・・って。
表参道を並んで歩きながら、目的地であるパーティー会場へと向かう私たち4人。
前を歩くのは、誠也とマコの都立高校進学組。
そしてその後に、私立高校進学組の私と一稀が並んだ。
土曜日の表参道は混み合い、4人が横に広がって歩く訳にはいかない。
そして強くなってきた昼の日差しも手伝い、体が少し不安定になってくる。
「・・・おい!大丈夫か!?」
そう声を掛けられてはっとした。
気付いたら、表参道の路上に座り込んでいた私。
そしてすぐ傍には、隣を歩いていた一稀の姿があった。
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