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「おーい!マコ!誠也!
悠里が具合悪そうだから、ちょっと止まってくれ!!」
前を歩いていた2人にそう声を掛け、私に右手を差し伸べる一稀。
差し出されたその手に、私はゆっくりと触れた。
「ありがとう・・・。」
一稀にお礼を言い、先を歩く2人の背中を探す。
誠也とマコは、私たちのだいぶ先の路上でまだ立ち止まっていた。
いつの間にか、こんなに距離が開いていたなんて・・・。
一稀が同じ歩幅で隣を歩いてくれていたから気付かなかった。
昔からとても気遣いのできる一稀。
見た目は変わっても、やっぱり中身は変わっていない・・・。
「悠里、本当に大丈夫か?
あと少しだけど、タクシー乗るか?」
そう言って車道に近付こうとした一稀を留め、弱々しい笑顔を作り出す。
みんなに迷惑は掛けられない。
だから・・・、しっかりしなくちゃいけないのに。
「平気だよ。
ほら、早く2人に追いつかなくっちゃ!」
私はすくっと立ち上がり、軽い足取りで先を歩く2人の方へと向かっていった。
そしてその後を、不可解そうな表情を浮かべる一稀が付いてくる。
「あぁ~、こういうパーティーっていいよな。
昼間っから酒が飲めるし。」
「馬鹿ねぇ。
アンタはまだ、お酒を飲める年じゃないでしょうが!」
「いいんだよ。
どうせあと1ヶ月でハタチなんだからさー。」
誠也とマコの会話を耳に入れつつも、その後ろを歩く私と一稀は無言のままだった。
もしかしたら、勘の鋭い一稀は何かを察したのではないか。
そんな不安が、一瞬脳裏を過ったから・・・。
それに一稀は、この3人の友人の中で唯一『あの事』を知っている。
だからきっと、私の不調にもいち早く気付いてくれたのかもしれない・・・。
「なぁ・・・、悠里?」
すぐ隣から、私を呼ぶ声がする。
そんな彼の表情は、少し切なく不安気だった。
「・・・何?」
「お前は、酒飲むなよ?」
「・・・わかってる。」
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