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*冬舞くん目線
「春喜さーん!」
俺は今、春喜さんのアパートでソファを独占している。
ドライヤーの音が止まり脱衣場からVネックのロンTにスウェット姿の春喜さんが現れた。
「どうしたの?」
こっちへ来る途中に冷蔵庫から缶ビールを取り出し、ソファとローテーブルの間に座り込みながらプシュッと良い音をならした。
「来月のシフト出すんだけど、春喜さんは来月の日曜全部休み?」
ゴクゴクと美味しそうに喉を鳴らしながら俺の話を聞いていた春喜さんは缶をテーブルに置いてから俺の方へ向いた。
「日曜は全部休みだね
あと土曜も第二以外は休みだったはず」
「おっけー」
大きめの2人がけソファに寝転がったまま店長にシフトメールを打っていると
「よいしょ」
春喜さんは俺の左足を掴むとそのまま両足の間に座ってきた。
「何してんの?」
スマホ越しに怪訝な目を向けると、何故か笑顔になった春喜さんは俺の肩の上に両手をついて覆いかぶさってきた。
「冬舞くんお風呂は?」
「…家で入ってきた」
「じゃあ準備はオッケーだ!」
嬉しそうに笑ってそう言いながら春喜さんの右手が俺の頭を包むように首の下に滑り込んできた。
「何が?」
更に目に力を入れて睨んだ。
「今日は泊まってくでしょ?」
そう言いながら首に添えられた手の親指で優しく耳を撫でられたせいで少し声が上がってしまったが、睨みは緩ませないように気をつける。
「んっ…
…泊まるけど、しないよ?」
口元を隠していたスマホが春喜さんの左手に奪われる。
「何を?」
目線はそらさずに首を少し傾けて更に顔を近づけてきた。
その熱い視線に耐えきれず、俺は奪われたスマホを追うように見ながら答えた。
「え?何って…あれだよ…あれ」
「あれ?…なんのこと?」
フフッと笑った春喜さんの息が俺の頬にかかる。
こういう時の春喜さんははっきり言ってだいぶしつこい。
「ねぇ…なんのこと?
冬舞くん、黙ってちゃ分かんないでしょ?」
そう言いながらも俺の弱いところを熟知している右手が耳を撫で続けている。
俺は春喜さんの手から逃げるように顔を動かしつつ、漏れそうになる声をグッと堪えていた。
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