第1話

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 錆びたフェンスは案外低い。身長155センチの私でもヒョイと飛び越えられるくらいの高さだ。  淵に捕まって地上を見下ろす。  風がビュウビュウ吹き上げ前髪が乱れる。  屋上から見るとグラウンドで熱き青春の部活動に汗を流す生徒たちがまるでゴミのようだ。  ちょっと足がすくむが、ここで怖じ気づくわけにはいかない。  今日死んで、忌まわしき学生生活とオサラバするのだ!  入学以来1-3に於いてスタンダードなぼっちライフを送っていた私が  「あれ?私もしかしていじめられてるんじゃね?」  と気付いたのは6月はじめのことだった。  日本国には身分制度など存在しないが、学校社会に於いては確実に存在する。  クラスのリーダーを頂点に三角形で構成されたカースト制度的なランクで敷かれた暗黙の身分制度。  人気者またはイケメン美人~人気者に媚びて人気者グループに属する者~人気者ではないが明るい者~何の特徴もないごく普通の者~やや大人しいが普通の者~大人しく目立たないがからかわれるレベルではない者~大人しいがなぜか目立つためにからかわれる者~根暗オタク~根暗キモオタ…といったところだ。  私は自他共に認める最下位ランクである。  小学校~中学でも同ランクであったため最下位レベルの扱いをされる件に関しては不本意とはいえ慣れたものだ。今までは同ランクの友達も多数存在したからそれはそれでやり過ごせたのだが、高校では少し違った。  入学早々季節外れのインフルエンザに感染し、1ヶ月も登校出来なかったという致命的すぎるミステイクにより友達をつくるタイミングをすっかり逃してしまったのだ。  やっとインフルエンザを完治させ意気揚々と登校した頃にはクラスではとっくに身分ごとのグループが出来上がっていた。  私が属せそうな最下位レベルの女子たちも卑屈さを隠してキャッキャッ楽しそうに教室の隅で腐女子キモオタトークに花を咲かせていた。  インフルエンザなどに感染しなければ私も今頃は彼女らとボーイズラブについて語り合いキモい笑顔を顔全体に貼り付けていたはずだ。  正直うらやましかった。  超仲間に入りたいと思った。
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