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「さっ。寝床に行くよ」
ふきが津軽訛りで言いひでの手を引いた。
ひではうんと答えて母と一緒に寝床のある二階へと向かった。
母は階段を登る途中悲しそうにひでに声をかける。
「あまり、お父さんに逆らうなよ。でなきゃ、ひでは死んでしまうよ」
ひでは、不思議そうに首を傾げる。
「僕がお父さんに殺されるの」
母は、ひでの頭を撫でた。
「お父さんならあるかもな。ひではいつも寝てる時間だから解らないだろうけど、お父さんは包丁を持って暴れることもあるんだよ」
ひでは、階段の途中で足を止めた。
「お母さんは怖くないの」
ふきが足を止めたひでの手をまた引いた。
「怖いよ。だから別れるかもしれない。そのときは、ひではどっちについていく」
ひではまた頭を傾げる。
「なんで選ばなきゃならないの」
ひでにしてみれば、当然母に着いていきたい。
しかし、当時、離婚によって別れた両親の子供たちはついて行く親を選べなかった。
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