信じても

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それは冬間近の秋口の頃だった。 世間一般の超常現象ブームに乗ってテレビ番組は連日のように宇宙人や怪談話などを取り扱っていた。 ひでの一家たちも夏の昼は確実に怪談話の番組を見ており、季節を問わず幽霊や宇宙人といった見出しが並ぶ番組は必ずといっていいほどに見ていた。 ひでの一家では父の次郎以外は不可思議な現象を信じていた。 特に霊魂の存在は片田舎のためか、あまり語らずとも事実であると次郎以外は信じていた。 祖父祖母の手前か一家でそういう番組を見るときは次郎も大人しくしていたが、常に下らないというのが次郎の言い分だ。 時代は、八十年代。 まだ宗教への信仰は厚い時代である。 春秋の彼岸には、王余魚沢のお婆さんたちによって地蔵様に団子が供えられ、正月には神主の居ない神社に餅を供えるのも当たり前であった。 そういう祖父祖母を見ると子供たちも霊魂や神様が現実のように感じられるのだから不思議である。
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