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水子とは産まれずして亡くなった子供の魂である。
母にひでは幼い頃から、お姉ちゃんがいたんだよと教え込まれていた。
ひでが産まれる前に、母は車の運転中、交通事故を起こしてお腹の中の女の子を失った。
それを聞いていたひでは、お姉ちゃんが命を張って母を助けてくれたのだと、誰に言われずともそう思っていた。
仏間に置かれた赤い蓋がされた位牌をみるたびにお母さんを助けてくれたんだと幼心に感じていた。
なぜか母は、その話をひでにばかりするので、その事実を知らない兄のかずや弟ののりを不思議と感じていた。
その仏間に置かれた位牌が水子の位牌であるとは、かずものりも知らずに育ったのである。
兄のかずとて、その事故があったときは三歳に満たない。
覚えているほうが不思議でもあるだろう。
また、ひでは幼い頃から体が弱く喘息などの激しい発作を起こすことがあった。
母のふきは何件も病院を周り、ひでに合う病院を探した。
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