信じても

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ひでにしても不可思議な現象の体験談は学校で人気者になれると心得ている。 怖さというものに好奇心が勝ってしまったのである。 怯えているのを見せずにひでも応えた。 「行こうっ」 大介は、よしと声を上げて歩き出した。 その行き先は墓場である。 当時、墓石があったのは田舎ではまだ裕福な家庭である。 墓を守るという考えが現代より、まだ色濃い時代である。 ひでが幼いながらに思う墓とは、何代も前の御先祖が何人も同じ墓で眠るのだと信じていた。 そうそれは、仏間に飾られている写真の兵隊の姿の祖母の兄弟や武士や農民。 ひでの幼い知識で思い描ける故人である。 ひでが墓に行くのはお盆と秋彼岸だけである。 春の彼岸は、まだ雪深く墓たちが雪に埋もれていて子供の足では危険なため大人たちは子供を連れて行かない。 その少ない墓参りのたびに、ここには亡くなった人たちが眠っており大切にしなくてはならないと、ひでは教えられては育ったのである。
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