信じても

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ひでは息苦しさを隣に寝ている父や母に伝えようと声をあげる。 しかし、父や母からの反応はない。 更に声をあげようとする。 絞り出した声はうなり声だった。 それに気付いた母がひでの名前を呼ぶ。 しかし、ひでの返答はうなり声である。 ひでは開かぬまぶたのまま体を揺すられるのを感じた。 しかし、体を揺すったのが父であるか母であるか解らなかった。 全身の毛穴からは汗が噴き出し、喘息の発作が起こるのではないかとひでは感じた。 ひでは、その息苦しさの中、一つの言葉だけをただ頭で念じていた。 「ごめんなさい」 その息苦しさの中、ひでは罰が当たったのだと朧気に思っていた。 だからこそ、思い描く言葉は謝罪の言葉だったのである。 そのまま、ひでは意識を失い気付くと朝であった。 ひでが着ていた寝間着は汗でびしょびしょになり寝小便でもしたのかと疑いたくなった。 しかし布団は一切濡れていないのである。
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