信じても

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ひでは気味悪くなり、寝室を抜けて一階に降りた。 一階に降りて台所にいる母におはようと声をかけた。 母は普通におはようと返す。 「お母さん、夜、僕に変なことなかった」 それを聞いた母が首を傾げる。 「何もなかったよ」 ひでの背筋が寒くなった。 自分を呼ぶ母の鬼気迫った声は夢だったのかと。 そして、あの首を絞められたらような息苦しさも夢だったのかと。 「バカなこと言ってないで。早く支度してご飯食べて。今日も学校でしょ」 ひでは、うんと頷いて居間で寝間着を脱ぎだした。 ひでの服は居間の箪笥にある。 のそのそと身支度を整えて朝食をとる。 そのときから学校に行ったら夜のことを大介とあゆみに話そうと決めた。 いつもは遅刻ぎりぎりに学校に向かうひでであったが、その日は早めに家を出た。 そして、豆坂の手前、大介とばったり会った。 「ひで、今日は早いじゃん」 「うん。大介くん、あのね……」
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