学んでも

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それを見てひでは、すぐさま声をかける。 「お兄ちゃん。王余魚沢ってなんで王余魚沢っていうの」 漫画を開きながらかずは、なげやりに返答を返す。 「土曜日に習うだろう」 兄の言うことはもっともである。そして祖母も兄も解らないのだとひでは気付く。 母が仕事から帰ってきたら母に聞こう。 ひではそう決めた。 父はもともと王余魚沢の人ではないし、祖父も王余魚沢の人ではない。 尚且つ父の場合は難癖を付けてくる可能性もあるので聞きたくもなかった。 その夜、母は遅かった。 皆が夕食を食べ終えて順々に風呂に入り始めていた夜十九時半過ぎに母は帰ってきた。 母のふきはカメラの工場に勤めている。 忙しいときは二十時の帰宅のときもあった。 ひでもかずものりも母の車のエンジン音が庭から響くと母が帰ってきたのだといつものように判断した。 また祖父の車でも父の車でも家族は僅かなエンジン音の違いを聞き分けるのである。
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