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車のエンジンを止めて母は疲れた顔で家に入ってきた。
「ねぇ。お母さん」
母の姿を見た母はすぐさまに訊ねてみる。
「王余魚沢ってなんで王余魚沢っていうの」
一家の視線が母に集まった。
誰もが気になることなのだろう。しかし、母の返答は素っ気ないものだった。
「学校で先生に聞いてな。お母さん解らないから……」
ひではうなだれた。
家族は誰も解らないのだ。
兄のかずがまた、土曜日に習うだろうと呟いた。
それを聞いた母がそうなのと興味深そうに聞き返した。
「そうだよ。土曜日に王余魚沢の歴史の勉強するんだ」
かずの声に母は笑顔を見せる。
「習ったらお母さんに教えてね」
ひでの低い頭の上に母の手が置かれた。
「うん……」
ひでは元気なく頷いた。
結局、土曜日を待たない限り王余魚沢の名前の由来は解らないということだ。
翌日、学校に向かうと他の子たちも王余魚沢の名前の由来の話をしていた。
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