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「皆さん、こんにちは。雪で遅れてしまいました。流石に王余魚沢という名前だけある」
全員が不思議に思った。
なぜ、王余魚沢という名前なら遅れるのかと。
「皆さん、不思議なようだね。ここ王余魚沢は昔、軽井沢と呼ばれたこともあるんだよ」
皆が更に不思議に思う。軽井沢という名称はどこかで聞いたことがあるからだ。
「でも皆さんと知っている軽井沢とは別ですよ。王余魚沢は坂が急すぎて昔の人が背負った荷物を軽くして登る山だから、軽荷沢という名前で呼ばれたことがあったんですよ」
「へぇ」
その声は生徒のものではなく教師のものだった。
「王余魚沢の名前の由来はまだあります。魚の鰈と書いて鰈沢。山なのに不思議ですね」
「なんで王の余した魚って書くのっ」
誰かが声高に訊いた。
教壇に立った老人は待ってましたとばかりに微笑む。
「それはそのままの意味で王様の余した魚が鰈だから王余魚沢と言います」
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