眠っても

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王余魚沢に冬が来た。 山ほどの雪が毎日のように降り注ぐある日、ひでの家の電話が鳴った。 その受話器をとったのは母だった。 ひではのりと一緒に相撲をしてじゃれていたが、そのじゃれあいの笑顔が一瞬で消えた。 「としくんところの大おばあちゃんが亡くなったから手伝いに行くよ」 母のその言葉にひでもかずも黙る。 としとはひでの家の隣の酒屋の息子である。 菓子とかも扱っており、流行りのシール入りのチョコをすぐに全種集めるような子供たちに羨ましく思われる子だった。 「としくんの大おばあちゃんって誰」 としの家の大おばあちゃんは何年も入院しており、ひでには面識がなかった。 母のふきは覚えてないかと小さく呟いた。 「ひでは小さい頃、遊んでもらったことあるんだよ。さぁ準備してね。行くよ」 その日は、ひでの家には母とひでとのりしかいなかった。 幼い子供二人だけ残していく訳にもいかないので、ふきはひでとのりに上着を着せる。
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