眠っても

3/16
前へ
/223ページ
次へ
祖父の政一と祖父のゆこは温泉に出掛けている。 父の次郎はかずを連れて実家がある大河原という村に大工の手伝いに向かっていた。 としの家はひでの家の間に畑を挟んだすぐ隣である。 雪が吹雪く中三人はとしの家に着いた。 玄関先でふきが居るかと津軽訛りで叫んだ。 としの母ととしが玄関先に現れた。 「ふきさん、手伝いに来てくれたんだ」 ふきととしの母は二言三言交わしてふきは中に入る。 ひではその間、母親の後ろでぼうっとしているとしから目が離せなかった。 いつも皆を引っ張っていくいつものリーダー振りが微塵も感じられなかった。 目の下は赤くなっている。 入り口でぼうっと眺めていたひでにとしが声をかける。 「入れば。みんな居るから」 ひではうんと小さく頷いて長靴を脱いだ。 無造作に置かれた小さな長靴をとしは玄関先に揃えて並べた。 「靴くらい揃えろよ」 としに元気はないがいつもの兄貴風に代わりはなかった。
/223ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加