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「ひで」
静かに大人しくしていたひでにふきが声をかけた。
「大おばあちゃんの顔を見てあげてな 」
ひでは母のふきに手を引かれて大おばあちゃんが眠る寝室へと移動した。
その部屋は灯りが昼にもかかわらず点いているのにも関わらず暗い感じがした。
母がその部屋の真ん中に置かれた布団の前に腰を下ろした。
そして、大おばあちゃんの顔にかかっていた布をとる。
ひでは、母に習って隣に座った。
そして、大おばあちゃんの死に顔をまじまじと見た。
「僕、この人なんとなく覚えてる……」
八十を越しているだろうしわくちゃの顔は穏やかで緩やかであった。
母のふきも目蓋から涙を一筋流していた。
「お母さんの小さい頃の酒屋はこのおばあちゃんがやってたんだよ」
ひでは酒屋の店主というととしの祖母を思い浮かべる。
ひでには、母の子供時代など想像もつかない。
ふうんと静かに生返事をした。
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