眠っても

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その日十九時過ぎに母とひでとのりは自宅へと帰った。 夕食は、としの家に集まった大人が作った炊き出しの余りだった。 その時刻には家族が全員揃っていたが全員が礼服を引っ張り出していて忙しそうだった。 次郎以外は全員着物である。 ひでは祖父が袖を通した紋付きの着物が格好良いなと感じていた。 だが、そんなことを言える空気ではなかった。 翌日、七時には全員がとしの家に向かった全員が手伝いに向かったのである。 なぜかとしの家で葬式は会場を借りずに自宅で行われた。 ぎゅうぎゅう詰めの部屋に立派な祭壇。 煌びやかな袈裟を着たお坊さんが棺を前にお経を唱える。 その間、人々の前に何かが回される。 ひでには何をしているが解らなかったが、ひでの番になるとこうやるんだよと隣の大人がお香を三度つまんで額まで運び、火種にぱらぱらとかけた。 ひでもその真似をする。かずものりも難なくこなせたようである。
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