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「ひでっ」
父の高い声が山びことなって夜を迎えた山に響いた。
ひでは、母と共に風呂に入り、上がりたてに髪を祖母に拭いてもらっていた。
父は夕方五時半から晩酌をしており夜八時を過ぎた頃にはいい加減に出来上がっていた。
ことの発端は夕食時に遡る。
ひでが昼、大工である父の用意した資材に落書きをした。
それを見ていた祖母が夕食時に家族皆にいつものひでの悪さだと吹き込んだ。
父は黙って聞いていたが酔いが回った頃に叫び出す。
「お前はいつも悪さばかりっ。少しは、かずやのりを見習えっ」
父の出した名前のかずは、ひでの兄でのりは弟。
ひでは三人兄弟の真ん中だった。
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