食べられても

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「いやだいやだいやだいやだっ」 ひでは乗せられたら肩の上でジタバタと暴れる。 父がうるさいと叫んでまたひでの尻を強く叩いた。 酒乱の気がある父に酔っているときに逆らうものなどいず、ひではそのまま外に連れ出された。 外には夏の大三角形を描く星空が輝き漆黒の闇が広く広がっていた。 ほうほうと梟の声がどこからともなく聞こえ、野良犬たちの遠吠えが闇夜に響いく。 ひでの家の裏は林となっており、そこを抜けるとりんご畑と繋がるのだ。 父はひでの尻を何度も何度も叩きながら、その林道を抜けていく。 「いやだぁぁ。怖いよぉぉ」 ひでの叫び声に呼応するように野良犬たちの遠吠えは更に大きくなる。
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