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まだ五歳になったばかりのひでには小さな田舎の一本道も果てしない距離に思えた。
父の姿が完全に視界から消えると、ひでは素っ裸のまま、草むらにごろりと寝っ転がった。
初夏を迎えたばかりの畑の草むらは夜露に濡れて冷たかった。
「死んでもいいや……」
そう呟いてひでは空を仰ぐ。
星星は変わらない夜の装いで素知らぬ顔でキラキラと輝いていた。
ひでは裸なだけに少し寒くも感じられたがどうせ食べられて死んでしまうなら寝ているときがいいと、草むらに伏せる。
仰向けになると更に広い夜空がよく見えた。
尻のあたりが草でチクチクして、何度も寝返りを打ち体勢を直す。
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