鼻血男ですが、何か?

13/50
前へ
/106ページ
次へ
言い逃れができない。 逃れられない証拠を突きつけられた犯人ってもしかしたら、こんな気持ちなのかもしない。あからさまに気持ちの悪い、黒く光る虫、通称、Gさんを発見したときと同じような表情をするんじゃないだろうか。ジーサンではなく、Gさんである。ご老人は親切にするべきだ。けっして、目の前に居るポニーテール少女のような苦虫を噛み潰した表情をしてはいけない。 「そうじゃなくて、ここにひょっとこの仮面を被った女の子が居たんだよ。それを追っかけてたら、ひょっとこと叫び続けたつーか。黒板に変なこと書き殴っていったつーか。えーっと」 「あぁ。つまり、放課後の教室で女の子を追いかけ回していたら、ひょっとこと叫ばれましたと、それから黒板に変なこと書き殴っていたと、そう言いたいわけ?」 蔑む視線がたまらなく痛い。違うんだ。言い訳すればするほどに、泥沼に嵌まっていく感じだ。どうにか、打開策はないものか。 「違うんだ。むしろ。俺が被害者だ。背中とか顔とか、脛、めっちゃ殴られたり、蹴られたりむちゃくちゃ痛かったからな」 「ほー、押し倒そうとしたら、逆に反撃にあったと、ま、力ずくで突き進む男ってひ弱か、短気よね。ちなみにあんたは断然、前者、ひ弱そうだもの」 くー、この女、好き勝手に言わせておけば、でも、事実なんだよなぁ。ひ弱、否定できないのが、悲しいけど事実だった。 「ひ弱で悪かったな。言い訳に聞こえるかもしれないけれど、けっして、女の子を押し倒そうとしてたわけじゃない」 事実だからって、このままはい、そうですねと頷き返せば相手の思うツボだ。 「ふーん。押し倒そうしてないんだったら何してたわけ? もしかして、一人でイタい妄想に浸ってた? うわ、キモっ!!」 腹痛いと言って、キモイキモイと連呼する。 「違うわ。つーかさ、そうやって人を卑猥な妄想大好きみたいなこと思うのを今すぐやめろ」 「ふーん。それなら、放課後の教室で、何してたわけ?」 「ひょっとこの仮面を奪い取ろうとしていた」 「変わんねーじゃん。悪化してるし、押し倒そうとしたって言った方が説得力あるって」 あー、マジで腹が痛いと、ケタケタもう一度、笑い出す、ポニーテール少女。どこに笑ってしまう要素があるのか。不思議過ぎる。ひとしきりケラケラと笑ったあと。 「で、そのひょっとこ仮面だっけ? どこにいるの?」
/106ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加