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どこにいるって、どこにいるんだ? あのひょっとこ仮面はどこにいった?
「どこにいったんだろうな」
なぜか、ポニーテール少女が一歩、後ろに下がった。その表情がなんだか、気持ち悪いものでもみるような物に変わった。
「あんたさ、そういう妄想とか、やめたほうがいいわよ。居もしない人をいるとかスッゴく痛いから」
「そんなわけないだろ。確かにそこにいたんだよ」
ひょっとこ仮面、あいつは、いったい何者なんだ? どうでもいいことに思考が飛びそうになるが、ポニーテール少女がもう一歩、下がった。
「なんで、一歩、下がった?」
「いや、あの、あんたがキモいから」
「言葉の暴力!! それ、言葉の暴力ですよ」
ダメだよー、それはダメだよ。でも、この調子だったら友達に
「あ、ほんとに近寄らないで、というか、私、もう帰るから、それじゃ」
踵をさっと返してポニーテール少女は、教室を出て行った。あきらかな拒絶の態度に言葉が出なかった。呼び止めることもできないまま、俺は教室に一人で取り残された。いったい何が悪かったんだろう。虚しさだけが胸の奥底でグルグルと渦巻いて憂鬱な気持ちになっていく。
「…………まぁ、いいか」
と、自分に言い聞かせながら、黒板に書き殴られた文字を消していくが、虚しい気持ちは消えない。
「ほら、やっぱり、友達なんてできなかったでしょう?」
背後から、声がした。振り返るとそこには机に腰掛けてカタカタとひょっとこ仮面が肩を揺らして、笑っていた。
「お前、今までどこにいたんだよ。お前のせいで変な誤解されたじゃねーか」
「何を言ってるんですか。それは、自分の言葉のあや。それに、私に全ての責任を押し付けようとしたからですよ」
「押し付けようって、お前が、変なゲームをしたからだ。俺は悪くない」
悪くはないはずなのに、
「悪くはないんだ」
言い訳のように言い残して、教室を飛び出した。ひょっとこ仮面は追いかけてこない。もう、あのひょっとこを見ていたくない。表情が見えないことがことさらに不気味だった。
「鼻血男さん。友達、できるといいですね」
去り際に、ひょっとこ仮面が言ったが、俺は言い返すことなく立ち去った。
明日、俺は放課後の教室で奇声を張り上げていたと噂がたっていたことは、この時はもちろん、知るよしもない。
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