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憂鬱だった。噂を流したのは、あのポニーテール少女か、ひょっとこ仮面かどちらでも構わなかったけれど、とにかく周囲の視線が痛かった。直接、聞きに来る奴はいなくても、その陰でどんな憶測とおひれはひれがひっついて、噂になるかわからない。
俺の立場が、どんどん失っていくことが手に取るようにわかった。俺は友達ができないんだろうか、どうやったら、友達ができるのか。よくわからないことが両肩に乗っかってずっしりと重たい。他人はいとも容易くやっているのに、どうして、俺だけが上手くいかないんだ?
「…………」
気がつけば、図書室の扉の前に立って、そのまま入った。自然と安心してしまう、立ち並ぶ本棚に、入れられた本、物静かな雰囲気に心地がいい。中学生の頃は毎日のように入り浸っていたけれど、高校生になってからは足が遠のいていた。本ばかり呼んでる奴は孤独を望んで、空想に浸っているイメージが出来上がったため自然と足が遠のいていた。
自然と本棚の間を歩き回り、適当に本を取ってはパラパラとページを捲っていく。ページに広がる文字を目で追いながら読んでは戻す。ページを捲る感触、ふわりと香る古い匂いに気持ちが落ち着いていく。
そこで、ある本に目が止まった。タイトルがない珍しい本だった。俺は背表紙に指を引っ掛けてその本を手に取り、表紙を見た、そこにはひょっとこのお面を被った女生徒が描かれていたが、やはり、タイトルはない。
ひょっとこ、なんだか、へんな因縁を感じる。このまま本棚に戻してもよかったけれど、戻してしまうこともできずに表紙を開いた。
別に何かを求めていたわけじゃない。神出鬼没なひょっとこ仮面の手がかりがそこにあるなんて思ってもなかったし、あまりあいつと関わり合いになりたくなんかった。
その本は絵本のようだったけれど、文字はなく、挿絵もぽっかりと虫食いしたように消えていた。ペラペラと捲っていくが、どのページも同じで、最後のページに差し掛かった頃、ペラリと一枚の手紙がずり落ちた。
そこに書かれていたのは、『ひょっとこ仮面と出会った人へ』
俺は震える手でそれを、拾い上げた、何かの因果を感じるが、このまま逃げることはできそうになかった。震える手で手紙を開いた。
『ひょっとこ仮面に出会った人へ……』
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