鼻血男ですが、何か?

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『この手紙を読んでるのは、校内でひょっとこ仮面に遭遇した人間だと信じてこれを記す。もし、人違いなら手紙を本に挟んで、本棚に戻してほしい』 という、書き出しで手紙は始まっていた。この手紙を書いたのは誰だろうか。この高校の卒業生だろうか。疑問をよそに読み進めていく。 『まず、この手紙を読んでも悲観することはないことを、最初に記しておく。それは、ひょっとこ仮面が悪意の存在ではないということだ。いや、まず、彼女について説明しよう。最初に言っておくが彼女は、この学校の生徒ではなく、この高校に住み着いた霊だ。どのクラスを調べても彼女の痕跡を見つけることができなかったため、私は、そう推測する』 不確かな推測に少し、眉をひそめたが、あのひょっとこ仮面の神出鬼没を考えるなら否定はできなかった。彼女が、幽霊と断言することはできなくても、昨日の放課後の一件を考えるならもしかしたらと思わなくもない。 『もちろん、これは私の憶測でしかないが、そう断定するしかないことがいくつも起こった。背後に居たと思えば、居なくなった。密室だった場所から忽然と姿を消した。彼女を認識できる人間がほとんどいないこと、または、一定の時間を経過すると記憶のリセットが起こっているのかもしれないが、これも憶測の域を脱することができない。なぜなら、筆者である私の他に認識できる者がいなかったからだ。または、私の妄想や幻覚かもしれないと願わなくもかいがその可能性は、この本の存在を見る限りは低いだろう。次にどうして、私のみが認識できるかだが…………』 ここまで読み進めて、この筆者にもひょっとこ仮面が何者なのかは確信には至っていない。ただ、こうして、書き記しているだけに何かしらの答えにはたどり着いたのかもしれない。 『一人を好む人間だということだ。これははっきりと断言できる。なぜなら、ひょっとこ仮面、彼女が私に告げたから、「貴女は孤独な人間ですね。だから、私が見えるんです」と彼女の言葉を鵜呑みにすることはできないけれど、思い当たる節はそれしかない』 孤独。その言葉に胸がしめつけられた。俺だって友達がいない人間だ。一人だ。 『冒頭でも記した通り、彼女は決して悪意のある存在ではない。彼女は寂しがり屋の霊だ。これを読んでいる君に頼みたい。彼女と友達になってあげてほしい…………』 と、そこまで読んだところで、声が聞こえた。
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