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「もうすぐ、昼休み終わりですよーっ、げっ!!」
露骨に彼女、ポニーテール少女が表情を歪めた。俺だってげっと言いたいしかし、そうだけれど、人の顔を見てそんな顔しなくてもいいじゃないか。泣くぞ。
「どっ、どうも」
「やめて、近寄らないで、なんか、一人ぶつぶつ言ってて気色悪い」
気色悪い。もう、泣くぞ。わき目もふらずに号泣するぞ。昨日、会ったばかりなのにその仕打ちってなんなの。
「ぶつぶつって、俺はこの手紙を」
と答えようとするが、手元から手紙と本が消えていた。あ、ヤバそうだよ。
「やめてよ。そういう妄想とかチョーキモい。中二病なんてさっさと卒業しなよ。バッカじゃないの」
「あのさ、ちょっとだけでいいから、俺の話を聞いてくれませんかね? ほんの少しだけで」
「キモい、うざい、うるさいし、へりくだんないでよ。全体的に気持ち悪い」
とりつく島もないとは、このことだろうか。もう、不審者をみつめる瞳が俺を射抜く。俺が何かしたのでしょうか。
「あーもー、俺はただ、本を読みにきてただけ。それでいい? いいだろう? もう、いいでしょ。キモいかもしれないけれど、とにかく落ち着けってマジで泣くぞ」
罵倒に喜びを感じられる特殊な人間なんかじゃないんだよ。
「…………そう。そうよね。図書室は本を読みにくるところだものね。あんたがどうしようもない変態だとしても、それくらいの権利はあるわよね」
「……………………………」
俺って、この子に何かしたのか、どうして、そこまで貶められないとダメなの。もう、死ねばいいの?
「で、変態は、こんな所で何をしていたの?」
「本を読んでました」
「あんたが、本を? ここにはそーいう卑猥な本は置いてないわよ。いやらしい」
肩を抱きしめつつ、ポニーテール少女が後退した。なんでそういう結論になるの。違うよ。そうじゃないんだよ。
「おれは卑猥な本をじゃなくて、普通な本を読みにきただけなんですけど?」
「あんたが、読む本はどれも、脳内で卑猥に変換されるんでしょ?」
「されねーよ。どんな奴だよ。怖いよ」
「放課後、一人で奇声を張り上げる奴が言っても説得力がないわよ」
そうだけれど、
「………ああれは、ひょっとこ仮面がやったんだよ」
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