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もう、わけがわからない。カタカタと肩を揺らして笑う、ひょっとこ仮面に俺はあきれ半分で問いかけた。つーか、こいつとなにげに会話してるけれど、いいのか、俺。
「なにがしたいですか。貴方が私の顔をみて、ひょっとこと言いましたよね」
「おう、言ったな」
言ったな。でも、それがどうした。
「そうです。私がひょっとこですと言いたかっただけです。テヘっ」
コツンっといっけねみたいな感じで、頭を小突き、わざとらしくテヘッと言うところがむしょうに、腹が立つ。
「うざっ、変なおじさんをパクるな!!」
あの有名な芸人のパクリも許せん。なの、ひょっとこ仮面は動じることなく、ひょうひょうと答えた。
「いいえ、私は変なおじさんではありません、ひょっとこです」
「知ってるよ!! わざわざ言い直さなくていいっ!!」
隙ができれば、すぐにでも引っ剥がしてやりたいがまったく隙がない。手を伸ばそうとすると、ぺちんと叩かれた。表情は見えないけれど、甘いと思われてそうだ。悔しいっ!!
「そう、熱くなりなさんな。あんまり興奮すると、血圧が上がって鼻血が吹き出しますよ。鼻血男の得意技で私を鮮血に染めるつもりですか? 」
「するか、そんなこと……って、うおっ」
気がついた時には、俺の鼻からドロリと赤い物が流れ落ちて、
「わーっ!! 鼻血男の必殺技、興奮鼻血ボンバーが炸裂っ!! 鼻血ボーン、鼻血ボーン、鼻血男が鼻血をボーン!!」
それを、派手に指差しながらひょっとこ仮面が騒ぎ立てた。誰が、鼻血男、いや、鼻血ボンバーって、さっきから鼻血ボーンうるせぇー、他の奴も何事かと注目してるし、ああ、俺の居場所がなくなる。その前に止血、ポケットから取り出したティッシュを丸めて、鼻に詰め込む。これって傍目から見るとすっげーマヌケであまりやりたくない。
「わー、鼻血男だけに、処置も手早い、でも、ププッ、ちょーマヌケ顔ですね」
「黙れやっ!! 第一にお前が俺を殴ったからだろうがっ、こっち来い、ひょっとこを引っ剥がして、素顔をさらしてやる。恥さらしてやるわ!!」
「やんっ、興奮鼻血男が鼻血を撒き散らそうとしてるわ、こわーい」
と、言いつつも混雑する食堂をスイスイと抜けて逃げていく。
「撒き散らしてねーよ。勝手なことを言うな。つーか、待て、逃げ足、早ッ!?」
そのあまりの早さに唖然としてしまい、俺はひょっとこを取り逃がした。
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