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午後の授業を、ティッシュの鼻に詰め込んで受けるという苦行を成し遂げた俺は放課後の教室に残り、一人で突っ伏していた。まわりからのクスクスと聞こえる忍び笑い、好奇の視線。昼休みの出来事は瞬く間に広がり、鼻血男としての、汚名をさらに格上げしてしまうこととなった。死にたい。さらに最悪なのは、自分が流した鼻血がテーブルを汚してしまったことだ。その責任として、テーブルの拭き掃除を命じられ、授業には遅れるとほんとにいいことがない。
あんなひょっとこ仮面に関わったせいで、とんだ恥をかいた。思い出すとむしゃくしゃするが、ここで校内を探し回ったところで見つけられるわけなんてないだろうし、新たなトラブルの予感がビンビン伝わってくるため、イライラとした気持ちを胸の奥底に沈める。
「なんか、美味いものでも食うか、でも、一人で食うのはむなしさがな……」
正直、いまだにファミレスとか行けない。疎外感で押しつぶされる。
「そうですよね。周りの人達は楽しそうに談笑しているのに自分だけがポツンとごはん、あ、楽しそうだな、でも、いきなり割り込んだりしたら迷惑だよな、どうしよう」
「そうそう。一人だけって、つらいんだよな。それに注文する時、声が裏返ったり、噛んだりしねーかと思うと不安でついついそういう店より、コンビニに…………ん?」
聞き覚えのある声が、つーか、さっきの声は誰だ。この教室には俺、一人のはず
「もしもし、私、ひょっとこ、貴方の後ろにいるの」
振り返るが、誰もいない、メリーさ、ひょっとこ? 嫌な予感がビシビシと伝わってくる。今すぐに逃げろと何かが叫ぶ。
「もしもし、私、ひょっとこ、今、貴方の隣にいるの」
ちょんちょんと、頬をつつかれる。恐る恐る、横を向く。そこにいたのは、
「こんにちは、ひょっとこです」
昼間、遭遇したひょっとこ仮面だった。
「テメーか!! つーか、どっから湧いて出たっ!!」
「普通に教室の扉から抜き足、差し足、忍び足で入りましたけど? ちなみにさっきまでしゃがんでました」
「心臓に悪いことをするんじゃねぇ!! お前の顔は間近で見るとすっげーびっくりするの!!」
「ひどいですね。女の子の顔を見ると驚くなんて、それとも興奮して鼻血が吹き出すからですか? ボーンっと、鼻血がボーンッ!! 鼻血男は鼻血をボーンッ!!」
「しねーよっ!! つーか、俺は鼻血男じゃない!!」
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