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「そう、睨まないでくださいな。たまたま、アンタを見つけたから、追いかけたのさ」
(江戸の商人がなぜここに? それとも、夢でも見ているのか)とぼんやりとした頭で考えているときも、平八は話を続ける。
「しかし、おどろいた。台帳を見たら、アンタは長州藩士じゃないか。ハッハハハ、この前は旗本だと言っていたから、おかしいな、と旅籠の主人に話していたら、おそくなった。まあ、そう警戒しないでくれ」
「岡崎からずっとつけてたのは……」
平八だったか、と言いかけて、栄太郎は口を噤んだ。名前をじかに訊いていないのを思いだす。
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