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「いや、寅次郎なら本気だろう。気宇が大きな男だからな。それに加え純粋だ。しかし、それが軽忽なことよ。至誠を尽くせば天に通じるってのは結構な考えだが、甘いよ」
「そうでしょうか」
「うむ。天に通じるためには、根回しってのも必要なのさ、世の中は」
商人の家に生まれた糸八らしい発想である。
「ところで、吉田君。俺は備前で商談がある――というのはおもてむきで、京での弾圧の状況を調べようと思うのだ。よかったら、京まで一緒にいかぬか?」
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