天下の志士

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  「水戸と薩摩は、異国に攻め込まれたことがあるから、他とは攘夷熱が違うということか?」   「それもある。しかし、それ以上に名君がおるからだ。徳川斉昭(とくがわ なりあき)、島津斉彬(しまづ なりあきら)――井伊のせいで藩政から退くことになったとはいえ、この二人が藩を治めているといって過言ではない。だから、吉田君、寅次郎によく告げよ。軽挙妄動するなかれ」  糸八は、低く力のある言葉を凄んだ顔で発した。      栄太郎は頷く。 「アイツはおっちょこちょいな奴だから、よく手綱を握るようにな。怨嗟が天下に溢れれば、斉昭公、斉彬公が動こう。そのとき義挙に呼応すべきだ」 「ああ、そのとおりだ。また、江戸に用事ができたら会いにいく」  
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