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伏見から水路で大阪へ渡り、大阪からふたたび陸路をすすむ。11月の初旬に萩に帰国した。
藩庁萩城がある指月山(しづきやま)から松本村に戻る途中、平瓦の継ぎ目に漆喰が網目の模様にもられた”なまこ壁”の屋敷にさしかかる。
このなまこ壁の屋敷には、萩の豪商が住んでいる。その屋敷から、目尻の垂れた男が、暗い表情で出てきた。
「佐世さん」
佐世八十郎(させ やそろう)だった。栄太郎の七つ年上であり、八十郎も松下村塾にかよっている。
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