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間部襲撃の計画を制止すべし、と栄太郎は心に決めた。
間部詮勝(まなべ あきかつ)は、大老井伊直弼によって老中首座に抜擢された人物。もし、襲撃を実行すれば松陰どころか、長州藩そのものが危うくなる。
この頃の栄太郎の家庭は、母いくと、妹ふさが家にいるだけで、父清内(せいない)は、栄太郎が萩に戻るまえに奉公のため京に上っていた。
そして夜、母と妹に気づかれないように家をぬけだした栄太郎は、すぐ近所にある松下村塾へむかった。
2つの影が動く室内の様子が、和紙に映し出されていた。
中には、眉間に殺気を宿し眦(まなじり)をつり上げる松陰と、背筋をまっすぐに伸ばし対座する入江九一がいた。
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