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「栄太、丁度よいところに戻ってきた。今、重要な話をしていた所です。座りなさい」
いつもは穏やかな松陰の語気が荒い。
(間部暗殺のことだろう)
と思いながら、入江の横顔を覗く。入江も難しい顔をしていた。
「先ほど、重大な報せが届いた。差し出し人は、京へ上り、伏見襲撃の策を遂行させている赤禰君……!」
塾生の赤禰武人(あかね たけと)のことであるのはわかったが、伏見襲撃が何を意味するのか、栄太郎にはわからず、その意味を問う。
「伏見の牢獄には、赤禰君の師、梅田(うめだ)がいる」と松陰は言う。
「他にも高名な攘夷志士が囚われている。赤禰君に、伏見の獄を破り、彼らを解放してきなさいと命じているのです」
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