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”長井”と発するたびに松陰の形相が鬼のようになる。いかに敵視しているかがうかがえた――
長井雅楽と吉田松陰は、立場が違うように思想、目的、手段も異なっていた。
藩内でずば抜けて高貴な血をひく長井雅楽は、貴族らしい保守的な考えの持ち主。それにくわえ長州と江戸幕府の間をとりもつ役割なので、言動が過激な松陰を忌み嫌うのは道理でもある。
しかし長井は、日本の片隅の長州藩からしか世界を見られない。
かたや松陰は、世界の中から長州、さらには日本を観ていた。
否、興亡の理によって、古今の通則によって、当時の情勢を洞察し、将来を予見し、ダイナミックに思想を醸成させていた。
ゆえに過激にならざるを得ない。
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