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「おや、あんたも政治に詳しいようだな」
平八の眼は注意深く栄太郎を観察している。栄太郎は刀を一本しか差さず、しかも、それが木刀であることがすぐに知れた。つまり、中間の恰好である。
「旗本の中間なのさ。しかし、これからは貿易の時代だって聞いてね、商人にでもなろうと思ってるんだ」
「やめとけ。開国に反対するものが多くて、貿易できるのがいつになるか知れぬぞ。つい先日も水戸の殿様が登城して、条約を認めぬ、と吠えたらしいからな。もっとも、将軍様は病気だと言って会わなかったらしいがね」
ほう、と栄太郎は驚いた様子で、さらに詳細に語らせた。平八は、幕臣から聞いたことを喋り、最後に、これは秘密にしてくれよ、と栄太郎に頼んだ。
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