間部要撃血盟

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   栄太郎が人に屈服せず意志を貫く男であることは、松陰が誰よりも知り、その頼もしさゆえに――危うさも含めて――、もっとも愛する人物としていた。 「間部襲撃を策しているようですが、それについて詳しく訊きたい。間部が井伊の下で、条約を結び、また朝廷を蔑ろにし、志士を捕縛しているとはいえ、先生が間部を襲撃すれば、長州藩の立場が危うくなるのではないでしょうか」 「それはちがう。間部襲撃は長州藩、毛利家のためになる」 「何故でしょうか、幕府を敵に回したところで、今の長州藩では――」 「君は知らないのか! 水戸、薩摩、尾張、越前の有志のものが、国賊井伊の誅殺をはかっている。さらには土佐、宇和島も加わるだろう! すでに怨嗟は天下に広がっている。ここで長州が魁(さきが)けとなり、毛利家の義名を天下に知らしめねばならないのです!」  
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