安政の条約

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   そうですか、と辟易する栄太郎。  そうだ、と断言して、晋作は続ける。 「ここで学べるのは、出世のための学問よ。俺が欲するのとは、違う」 「では、どんな学問を?」欲するのか、と栄太郎が訊けば、 「狂熱、さ」  そう言ってはにかんでから、掴んだ筆に血の手形がつくほど筆写せねばならぬ学問がほしい、と細い眼を赤く光らせた。  すでに晋作は酔っていた。まだ三杯しか空にしていないが、下戸の晋作は、それだけで酔う。栄太郎はしらふ同然。皮肉なことに、晋作を介抱し続けるうちに酒が強くなっていた。  
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