49人が本棚に入れています
本棚に追加
そうですか、と辟易する栄太郎。
そうだ、と断言して、晋作は続ける。
「ここで学べるのは、出世のための学問よ。俺が欲するのとは、違う」
「では、どんな学問を?」欲するのか、と栄太郎が訊けば、
「狂熱、さ」
そう言ってはにかんでから、掴んだ筆に血の手形がつくほど筆写せねばならぬ学問がほしい、と細い眼を赤く光らせた。
すでに晋作は酔っていた。まだ三杯しか空にしていないが、下戸の晋作は、それだけで酔う。栄太郎はしらふ同然。皮肉なことに、晋作を介抱し続けるうちに酒が強くなっていた。
最初のコメントを投稿しよう!