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「あのさ……お姉ちゃんたち、俺の存在忘れて無い?」
ドアの前で立ちつくした真人の引き攣った声がした。
「真人……」
「ごめん、忘れてた」
夏騎と二人、同時に頭を下げた。
こんな展開になったのも全て真人の気転のお陰なのに、存在をすっかり忘れて、夏騎からのプロポーズに酔いしれていた。
不貞腐れたままの真人が一度、家に帰ると言って病室を出て行った。
七宝焼き教室の先生をしている母は六時位にしか帰れないと言って朝、家を出たままだ。
父は仕事で明日にしか帰って来ない。
つまり、私の妊娠と二人の婚約を今はこの三人しか知らないはず。
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