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一杯ひっかけて、気の進まない勤めなどさっさと果たしてしまえばいいと──紫が、そう言ったのだ。
紫のせいにする気などない。
それを口にすることさえ、隼人には考えられなかった。
誰が何と言おうと、隼人の優先順位の一番上に来るのは節子達長老で──それを除けば、一番大事なのは紫なのだ。
紫は今夜のことを、すべて承知していた。
酒を持ってきたときの昏い目が、彼女の悲しみを語っていた。だから、その酒を口にしたのだ。
紫の顔を、見ていられなくなって。
鬼首哭の祭は、織姫が一夜の契りを交わした七夕神の子を孕む儀式だった。
その奇跡をもって、村を統治していく。
だが、神の奇跡だ加護だ、そんなことが当たり前に信じられてきた時代ならいざ知らず、現代で人間の女が神の子を授かるなど、誰が信じるのだ。
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