第1話

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漫画とか、絵本とか、小説とか。そんなのでよく見る“幸せな家庭”にずーっと憧れていた。 自分が幸せじゃない、思ってない。けれど、幸せですか?と聞かれて、思い切って、はい!と言えるほどでもない。 そんな程度の家。 ま、そんなのよくあるでしょ? 家は一軒家。三階建ての二世帯住宅。一階はまるまる車庫。しかも二世帯とか言いながら、おばあちゃんは高層マンションに住みたいといって出ていったから、一世帯四人と二匹ぐらし。 父親は公務員。母親はパート。兄は有名大学に現役合格。鈴(りん)は地元で真ん中くらいのレベルの高校。それと、血統書のついた猫が二匹。 広々したお家に、家に帰れば母の美味しい手料理。休日は父とDVD鑑賞。全く普通そうな家庭。 ただ、兄と鈴は喋らない。兄が鈴を嫌いだから。 それだけ。理由は、分からないけれど、いつからか話さなくなった。かれこれ二年ほど会話は途絶えている。 だからといって鈴が兄を嫌いなわけではないの。 むしろ、努力していい大学入って、だから好き勝手できる。それが羨ましいし、けど、自分がそうできないってことを教えてくれる人。 いろんな意味で尊敬しているし、追いかけたい背中だった。
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