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立ち去ろうとした珀露の袖を掴み、キラキラした眼差しを向ける真火に、珀露はたじろいだ。
「な…別に、大したことじゃないし!」
「私は真火と申します」
「…僕は珀露」
深々と頭を下げる真火に、渋々それだけ言うと、珀露はまた羽根を広げて飛び去ってしまった。
「…綺麗」
空を見上げ、呟く真火は美しかった。
「私…本当は、嫉妬していたんです」
「え…」
「さっき、信爾さまと珀露さまが…」
俯く真火に信爾は慌てふためいた。
「あっ!あれはその…!珀露はまだ未熟で、私から体力を奪わないと飛べないらしく…っ」
空から小さな木の実が飛んできた。珀露だ。
木の実が頭に当たったが、それにも構わず信爾は真剣な眼差しで真火を見つめた。
「そう…だったんですか…」
強ばっていた彼女の顔が解れていく。
「私が…嫉妬出来るような立場ではないんですけど…」
「そっそんなことは!!…あの、本当にすみませんでした。えっと…」
言葉を慎重に選ぶ。その間にも、自らの心臓の鼓動が思考を妨げる。
「…つまり、珀露とは何ともないんです!安心して下さい!」
ぐっと真火の肩を掴み、はっきりとそう告げた。
それでも燻った心が暴走しそうで――
気づけば目の前に真火の南天色の瞳があった。
驚いて見開かれたその目には、同じく驚いた顔の自分が映っている。
乾いた唇には、柔らかく温かな感触。
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