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「立ち話も何です、どうぞお上がりください」
廊下を歩きながら、気がつくと真火が袖を掴んでいた。
「…?どうかしましたか?真火さん」
「あの…っ」
真火が顔を赤くし、小声で言った。
「憧れだったんです…!璃胡さま…こんな近くに…っ」
ぎゅう、と袖を掴む手に力が籠る。
信爾は、緊張で強張る真火を横目で見て微笑んだ。
「…で、例の犬の話ですが」
璃胡の淹れたお茶を飲んで一息ついた後、頼爾が本題に入った。
璃胡はふと庭を伺うように見て、話始めた。
「今は…いないようですが…。つい先月のことです。嵐のような雨の中、倒れている紅を見つけたのは」
「私が畑の様子を見て戻ったとき、裏木戸のところに血塗れで倒れていたのです」
険しい顔で朋成が続けた。
「慌てて手当てをしましたが、血は全て紅の血ではなかったのです」
「ほぅ…返り血というわけですか?」
「ええ。次の日、明るくなってから辺りを見回りましたが、怪我をした人もいないようで…村の住人にも聞いて見ましたが、その日はみな家に居た、と」
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