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「…人の言葉を理解する犬」
爽やかな笹の葉擦れに混じるのは頼爾の低い美声。
「血に濡れた獣…」
「目の色が変わる…」
ざぁっと一際大きく葉擦れが起こる。
すると、草影から白い小さな犬が出てきた。
「噂をすれば…か」
「頼爾さま、お気をつけて…この子、犬ではありません」
悠羅の言葉に、袂から札を取り出した頼爾がにやりと笑う。
「奇遇だな。私もいまその考えに至ったところだ」
犬の目は赤く光っていた。
態勢を低くとり、獣独特の唸り声を上げている。
頼爾は呪いを詠唱し、札に息を吹き込んだ。
札は風もないのに宙を舞い、白い小さな獣目掛けて矢のように飛んでいく。
『ギャウッ!!』
牙を剥き出し、高く跳んで避けようとするも、札は獣の後を追いかけ鋭く突き刺さった。
『キャンッ』
札は獣の毛に刺さると、ボッと発火した。獣は慌てて地面に転がり火を消した。
白い煙と粉塵がもうもうと立ち込める。
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