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ぴくりと少年の肩が動き、ゆっくりと起き上がった。
地面にへたり込むように座る少年にはさっきの獣の狂気はなかった。
さながら怯える童子のように小さく震えていた。
頼爾は着ていた狩衣を脱ぎ、少年に着せた。
「…どうして私たちを襲った?」
頼爾の静かな問いに、少年はあどけない瞳を向けた。
あまりに邪気のない瞳に、頼爾は怯んだ。
「…名は?」
「…べに……」
「それは璃胡殿がつけた名前では…?」
璃胡の名を出した途端、紅の顔色がぱっと変わった。
「りこ…には、言わない、で…!」
頼爾の袖をぎゅっと掴んで訴える顔は必死だった。
「…どうして?」
頼爾は優しく諭すように紅の手を撫でた。
「ぼく…ここに来る前をよく…おぼえてなくて…。気づいたら、あの雨のよる…」
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